先日、国立国際美術館で開催中の展覧会「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」を鑑賞してきた。
もとは大阪府吹田市の万博記念公園内にあったが、2004年に現在の地に移転。
設計者は建築家シーザー・ペリ氏。あべのハルカスのデザインも監修しているんだそう。
目をひく外観。展示室はすべて地下階にある。
今回の展覧会の入場はすべて日時指定。
前日にローチケで購入。
購入時にさらっと確認したところ、休日は定員に達している時間帯もあったが、平日は前日でも問題なく購入できた。
入館時に体温チェックあり。
13時入場開始のチケットだったが、入場したのは13時半頃。
中途半端な時間がよかったようで、行列もなくすんなり入場できた。
こちらは撮影OKだが、「壁の前に人を立たせての撮影はご遠慮下さい」との案内。
ロンドン・ナショナル・ギャラリーは懐かしい思い出の美術館。
学生最後の年にイギリス南部のブライトンにホームステイして、ロンドン観光を兼ねて出かけたことがある。
こちらの写真の玄関前の対面はトラファルガー広場に連なっていて、正面にはネルソン記念柱がそびえ立っている。
たくさんの鳩がいて、ネルソン提督の像は○ンまみれだった気がする。
記憶がよみがえってきた。
最初にロンドン・ナショナル・ギャラリーに併設されているポートレートギャラリーを鑑賞、次いでこちらも。
一館でも膨大な量の絵を二館も鑑賞していっぱいっぱいで消化できなかった気もする。
またいつかヨーロッパ旅行をしたいと願っていたが、機会を得ず、現在はコロナ禍で海外旅行自体、無理になってしまった。
そんな中、開催された展覧会はたいへん貴重でありがたい。
音声ガイド(600円)ナビゲーターは俳優の古川雄大さん。
会場内、東京より混雑していないだろうと思っていたが、やっぱり人気の展覧会、空いているわけがなかった。
それでもタイミングを見れば、一番良い位置から鑑賞できる。
今回の展覧会の全61作品は全て初来日。すごい。
日本人好みのラインナップになっていると思う。
展示は大まかに時代ごとに区分されてされているので絵の流行というのか流れもわかって勉強になる。
学生時代の記憶をときどき辿りながらこの記事を書いているのだが、脱線してなかなか進まない。
脳の奥底にしまい込んだ記憶をよみがえらせそうとすると時間がかかるがとても楽しい。
カルロ・クリヴェッリ「聖エミディウスを伴う受胎告知」(1486年)
中世のテンペラ画の作品自体、日本ではめずらしいと思う。
細かく書き込まれたくさんの象徴というのか意味が込められていて興味深い。
この画像はチラシを撮影したもだが、ナショナルギャラリー公式HPでダウンロードもできる。
ヨハネス・フェルメール「ヴァージナルの前に座る若い女性」(1670-72年)
チラシの表面にも採用されている。今回の展覧会の目玉のひとつ。
最晩年の一作とのこと。
やっぱりフェルメール・ブルーが印象的。
フェルメールの作品を鑑賞するのはこれで人生4回目。
<過去に鑑賞した記事>
もしかして学生時代に現地で鑑賞していたかもしれないが、当時はフェルメールを全く認識していなかった。
レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン「34歳の自画像」(1640年)
ドヤ顔のレンブラント。
自信に満ちあふれているカンジが時空を超えて伝わってくる。
ティツィアーノに同じポーズの作品があるそう。
フェルメールの近くに配置されていたが、こちらの方が印象に残った。
イギリスは他のどの国よりも肖像画が多い国なんだそうだが、今回の展示にもたくさんあり人物を考えながら鑑賞するのも楽しい。
まず、王室や貴族の女性を描いた肖像画は豪華な服装やアクセサリーでときめく。
ゲインズバラ「シドンズ夫人」は女優だそうだが、美人はやはり絵になりますな。
ゴヤ「ウエリントン公爵」は何というのか、当時のイギリスとスペインの政治的な背景を考えるとより興味深い。
ムリーリョの子どもを描いた作品が二つあるが、よいですな。かわいらしさ満開。
学生時代に現地で鑑賞した印象で「イギリス人画家=ターナー」と刷り込まれている。
ルノワール「劇場にて(初めてのお出かけ)」(1876-1877年)は、 コートールド美術館展に展示されていた「桟敷席」(1874年)を思い出した。
モネ「睡蓮の池」は見覚えがあるのは、現地で鑑賞した記憶があるのか、他で鑑賞した似た作品の印象なのか。
フィンセント・ファン・ゴッホ「ひまわり」(1888年)
この作品は学生時代に現地で鑑賞した記憶がある。
当時から日本の美術館にも(当時の安田火災東郷青児美術館、現在のSOMPO美術館)にも収蔵されているのは知っていた(購入時にTV等でとても話題になっていたが鑑賞したことはない)ので、ゴッホは「ひまわり」という作品を複数描いていたんだなと漠然と思っていた。
今回のこの作品の隣に写真付きの解説があり、たいへん勉強になった。
ゴッホの「(花瓶に活けられた)ひまわり」は7点が制作されていて、ひとつは戦禍にあったが、残り6点は現存。
戦禍にあったのは日本の実業家の山本顧彌太氏の収蔵するものだったことを初めて知った。
友人ゴーガンも褒め称えたこのナショナルギャラリーのひまわりはゴッホ自身も特に気に入っていたよう。
写真で見比べてもこれが一番洗練されており、存在感がある。
ちなみに、ポール・ゴーガン「花瓶の花」(1896年)もよかった。
朱色、青、白の花が印象的で主張しすぎない作品。
いつも「もしひとつだけ家に持ち帰るなら」と妄想しながら鑑賞するのだが、今回はこれ。
ゴーガン、特別ファンというわけではないが、お花をモチーフにした作品は好みのものが多いことに気がついた。
ゴッホの作品は、エネルギーに満ちあふれ、狂気に引き込まれそうな怖さを感じてしまう。
今回、展示室に休憩用のイスはない。
コロナ禍以前の展覧会は、必ず展示室にイスが用意されていて、見本のカタログが置いてあったりした。
イスに座って休憩しながら鑑賞できたのはなんて素晴しかったんだろうと思う。
一応、イスは展示室外の地下1階にソーシャルディスタンスをとれるよう距離を置いて設置されていたが、圧倒的に数が足りないカンジでイス取り合戦っぽくなってしまった。
そのイスを円陣のように近づけておしゃべりに興じる女性グループが目に入った。びっくり。
今後、そういったコトを禁止する張り紙が増えているかもしれない。
地下1階の彫刻。
ヘンリー・ムーア(1898-1987)「ナイフ・エッジ」(1961/76)
常設展も鑑賞したかったが一旦イスに座ったら動けない。
2時間近く鑑賞したし、何よりホテルでランチするからとちょっとおしゃれなヒールの靴で来たのが大失敗。もう足が棒で。
残念。
帰りの新幹線、乗り遅れるとまずいので名残惜しいが美術館を後にした。
<最後はお土産の記事>