先日、愛知県美術館で開催中の展覧会「ミロ展 日本を夢みて」(4/29-7/3)を鑑賞してきた。
愛知県美術館は名古屋市東区にある愛知芸術文化センターの10階に入っている。
ウィズコロナ、アフターコロナになってから日時指定制の展覧会が多く、事前確認必須。
この展覧会は日時指定制ではない。
ミロといえば、近隣のよく出かける美術館の常設展にも作品が収蔵されていてなじみのある画家だと思うが、不勉強でミロと言えばこの作品という印象がない。
回顧展なら勉強になると思って出かけた。
会期半ばの平日の午後、人との距離が全く気にならないぐらいの混雑具合。
バルセロナに生まれた芸術家ジュアン・ミロ(1893-1983)は、ピカソやダリと並ぶ現代スペインを代表する巨匠として、日本でも永く愛されてきました。しかし、絵画や彫刻、版画、タペストリー、そしてやきものにまで及ぶその旺盛な創作活動の裏に、日本文化への深い造詣があったことはあまり知られていません。本展では、浮世絵や俳句を通じた日本への憧れが感じられる初期の代表作から、民芸や書、やきものを通じて触れた日本特有の質感を反映した戦後の大作まで、ミロの90年の歩みを辿ります。ミロがアトリエに飾っていた日本の民芸品や、世界で初めてミロの本を出した詩人・美術評論家の瀧口修造との共作を含む、約140点の作品と資料が一堂に会する本展は、ミロが「長い間、夢みていた」という日本での、20年ぶりとなる大規模な回顧展です。 ~ちらしより~
ちらしのこの写真がとてもよい。
でっかい信楽焼のたぬきと微笑みながら見上げるミロの対比がすばらしい。
印象に残った作品。
アンリク・クリストフル・リカルの肖像(Enric Cristòfol Ricart)の肖像 1917年 ニューヨーク近代美術館蔵
24才の時の作品。
人が人として描かれているのでわかりやすい。色使いが強力で目を奪われる。背景に浮世絵を貼り付けられているのがびっくり。モデルのリカル氏は美術学校の友人で浮世絵をコレクションしていたところからだそう。
貼り付けられている浮世絵は、富士山、お城、桜、牡丹、菊など日本っぽいものなんでも詰め合わせで、作品としては価値がないものというような解説があった。華やかでよいと思ったがなるほど。
ミロの日本贔屓は若い頃の友人の影響が伺える。
¡Gracias a Fundació Joan Miró, Barcelona por su colaboración!
— 愛知県美術館 (@apmoa) 2022年5月2日
バルセロナのミロ財団からお借りした《焼けた森の中の人物たちによる構成》(1931年)は、90年前、日本で初めて展示されたミロ作品の一つです。その荒々しい質感は見た人に鮮烈な印象を残したはず。#ミロ展 https://t.co/3KGeIFsEL8 https://t.co/ei4y5s0XdE pic.twitter.com/CcTGqEVVCm
過去にそれぞれの美術館で鑑賞したことがある作品も。
「絵画」1925年 愛知県美術館
一反木綿をデフォルメしたような……と思っている。
「絵画」1933年 豊田市美術館
「猫と紐」1925年 メナード美術館
(画像なし)
どれが猫でどれが紐なのかという突っ込みたくなる作品。
途中、撮影OKの作品2点。
「絵画(カタツムリ、女、花、星)」1934年 国立ソフィア王妃芸術センター、マドリード
作品中にフランス語でカタツムリ、女、花、星(Escargot、femme、fleur、 étoile)が流れるように描かれている。
1930年代のミロの代表作のひとつ。
スペインにある国立ソフィア王妃芸術センターは他にピカソの「ゲルニカ」などを所蔵。
ググったところ、ソフィア王妃は前国王妃で現国王のお母様。
「ゴシック聖堂でオルガン音楽を聞いている踊り子」1945年 福岡市美術館
「ミロ展──日本を夢みて」本日4/29開幕しました!スペイン・カタルーニャの巨匠ミロの90年の生涯を、初期から晩年までの多彩な作品で辿る回顧展です。シュルレアリストとして知られるこの作家の制作の裏には、日本の文化への意外なほどに深い共感が。7/3まで。#ミロ展 https://t.co/x4REQV1uY3 pic.twitter.com/UiDBdYyy0t
— 愛知県美術館 (@apmoa) 2022年4月29日
京都国立近代美術館に寄付した「大壷」1966年などの焼き物も。
ミロは2回来日している。
最初は1966年(73歳)に東京と京都で開催された「ミロ展」の際。
次は1970年に開催された大阪万博の際。
国立国際美術館の陶板壁画「無垢の笑い」(1970年)はその際の作品とのこと。
以前出かけたときの画像の右の隅に映っていた。
今度出かけた時は、ちゃんと鑑賞したい。
その際に、日本の「たわし」が絵を描く道具として気に入ったそうで、スペインに持ち帰ったたわしが展示されていて、なんだかシュールである。
今後ミロの作品を他の美術館で鑑賞するのが楽しみになった。
常設展の「2022年度第1期コレクション展」(4/1-7/3)も。
こちらは一部を除いて撮影可なので遠慮なく。
ジョルジュ・ミンヌ「聖遺物箱を担ぐ少年」1897年
第4展示室はよく知っている画家が勢揃いしている。
オーギュスト・ロダン「歩く人」1900年
令和2年度新収蔵作品。
今回初公開とのこと。
この解説がとてもよかった。
身近な人が書き込まれて微笑ましい。
たくさん書き込まれているので、日本の国旗はこの解説で見て初めて気づいた。
ポール・ゴーギャン「木靴職人」1988年
玉谷文男・俶子夫妻からの寄付金による購入。
篤志家からの寄付でこのような作品を愛でられる。ありがたい。
アンリ・マティス「待つ」1921-22年
中部電力株式会社寄贈。
ピエール・ボナール「にぎやかな風景」1913年
グスタフ・クリムト「人生は戦いなり(黄金の騎士)」1903年
トヨタ自動車株式会社からの寄付金による購入。
愛知県美術館の常設展では、必ずあるか確認してしまう。
~7/3までは展示されているが、その後は他館へ出張とのことで、戻ってくるのは1年後なんだそう。
この他にピカソの「青い肩かけ女」も確認するのだが、今回はなかった。
エドヴァルド・ムンク「イプセン『幽霊』からの一場面」1906年
寺島八千代氏からの寄付金による購入。
寄託作品でモネの作品も。(写真はNG)
展示室8は木村定三コレクション。
1975年5月に開かれた茶会(表千家6代家元覚々斎原叟(1678-1730)忌)の雰囲気を出している。
小川芋銭 扇面貼付屏風 制作年不詳
安南四方水指 17世紀 安南(ベトナム)
志野杜若文茶器 仕覆「唐花文様」制作年不詳
杉木普斎茶杓 銘「カチカチ山」・共筒 江戸時代前期(17世紀)
志野杜若文茶器 桃山時代(16世紀末)
お道具の銘が杜若や五月雨というのがよいですな。
とてもかわいらしい若冲の作品。
木村定三氏も気に入って何度も茶席に飾ったとか。
ガラスが反射してしまい残念。
ユーモラスさもあるお道具が揃えられていて、興味深かった。
コレクション展、初めまして作品も多々ありとてもよかった。
中庭。
左の方に映っているのは、今井瑾郎「大地」1992年。